[HOME]
[緊急 香港に銀行口座をお持ちの方へ]
日本における「プライベートバンキング」のリスク
スイスのプライベートバンクといっても「金融リスク」を免れるわけではありません。しかし、「金融リスク=価格変動リスク」以外のリスクについては、できるかぎり顧客がその影響を受けない環境が調えられています。その環境として、永世中立国というスイスの立地、その歴史的・文化的背景までもが含まれていますし、重要な役割を果たしています。
これは、逆からみれば、スイス以外の地域では、「プライベートバンク」「プライベートバンキング」といえども、金融リスク以外のリスクが相当程度含まれていることを意味します。
それはどういうことなのか、特に「日本におけるプライベートバンキング」、「日本からの(日本の業者を介した)プライベートバンキング」を取り上げて考えてみましょう。
資産が被るリスクのうち、金融リスク以外のものの代表が「政治リスク」です。政治リスクとは独裁国家の政変といったことだけではなく、国の地政学的なポジションによるもの、さらには不安定な政治、経済金融政策の失敗などが挙げられるでしょう。
日本の場合、近隣諸国の動向も不安材料です。また、現実に、日本政府や金融当局は、経済政策の失敗によって、バブル経済、その崩壊、さらにその後の長期低迷という事態を招いてしまいました。さらによく知られているように、日本政府の抱える巨額の債務は、常に日本経済の重しになっています。
けれども、おそらくこれらにもまして、「日本のプライベートバンキング」を妨げ、顧客資産に対するリスク要因となっていることがあります。
それは日本人が伝統的にもっている「お家大事」という倫理観です。赤穂浪士の討ち入りの話は今でもドラマになっています。赤穂浪士にとっての「お家」は藩でしたが、現代人にとっては会社です。日本人は、「ウチ(身内)」と「ソト」を厳格に区別し、「ソト」には過剰に警戒しながら、「ウチ」に対して忠誠であろうとする傾向があるのです。
ビジネスの世界で言えば、会社、業界、消費者という順番で「ソト」になって行きます。だから日本の会社は、「お客様第一」とか言いながら、なかなか本物の顧客指向になれないのでしょう。住宅販売のような「巨額すぎてリピーターがいない取引」でトラブルが多いのは、消費者指向が倫理として定着していないからでしょう(*注)。(ついでに言えば、それがお役所による「規制強化」の口実になるわけです。)
(*注) かつては、日本にも近江商人道や石門心学といった「見ず知らずの人への誠実」を説いたモラルがありました。それが滅んだとは言いませんが、近年、テレビドラマのテーマになったというような話は知りません。
この状況は、日本で「プライベートバンキング」を掲げる業者についても多かれ少なかれ当てはまることです。とりわけ、金融とは専門性の高いサービスですから、業者と顧客では情報量に著しい格差があります。その情報格差のある中、業者が適切な倫理性を欠いていたとすれば、どうなるでしょうか。「規制さえされなければ何でもあり」の世界になりかねないのです。
一方、消費者は、と言えば、やはり日本的な「ウチ」「ソト」という枠組みで考えていますから、「ソト」に向かってはやたらに警戒しますが、いったん心を許して仲間のように思うとすっかり信頼してしまうという傾向がみられるようです。実は、業者はそのことをよく心得ていますから、さかんに宣伝したり、営業マンを差し向けたりして、顧客に「知人」のように錯覚させ、警戒心を解こうと試みます。
しかし、「顔なじみ」の言うことだから信用するという文化がトラブルの温床となっている側面は否定できません。トラブルが社会問題になれば規制が強化され、中小の金融機関にとっては生き残りにくい環境になるでしょう。やがて市場は寡占状態に陥り、顧客は高い費用を負担させられて、本来のリスクとは見合わない低いリターンしか得られなくなってしまうのです。
もちろん、日本的な「お家大事」という考え方には評価するべき点もあります。けれども、それは組織内部の結束を高めるには有効でも、プライベートバンキングとの相性は良いとは言いがたいのです。プライベートバンキングが定着するには、これとは別の倫理観が社会に浸透していなければなりません。
それは、「見ず知らずの人に誠実であれ」というモラルです。とりわけ、スイスのプライベートバンキングにおいては、その「見ず知らずの人」とは主として外国人です。現在もローマ法王庁の衛兵がスイス人であることからも知られるように、傭兵の供出国であったスイスには、「見ず知らずの外国のために生命を賭して戦う」という伝統がありました。
日本だけではありません。スイス以外の国や地域では、たとえ「プライベートバンキング」という看板を掲げたところで、その精神まで持ってくることは困難です。
また、その精神を欠いた「プライベートバンキング」とは形骸的なものにすぎないと言えるでしょう。
*当サイトでは、日本語の通じるスイス銀行(プライベートバンク)の口座開設について、無料でご相談を承っております。口座開設されたお客様には、スイス、リヒテンシュタイン等での長期滞在、移住、ご子弟の教育などに関するご相談にも応じています。(詳しくは、こちら)