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プライベートバンカーとは誰か

 

「あるスイスの銀行の取締役に「プライベートバンカー(*)になることにしたんだ」と言われたことがあります。私は、取締役を辞めて一介のプライベートバンカー(**)になるという選択に驚きました。彼は、「50歳を迎え、プライベートバンカー(*)になって金融マンとしての総仕上げをしたい。プライベートバンキング業務というのは、すべての金融の凝縮なんだ」と言いました。」(野村総合研究所『プライベートバンキング戦略』東洋経済新報社。下線・傍点は引用者。)

 

 

 日本では単なる投資コンサルタントや金融機関のセールスマンのような人が「プライベートバンカー」を名乗り、スイスの歴史を引き合いに出しては自分もスイスのプライベートバンクさながらに顧客の資産を守るのだと主張していることがあります。

それを見ると、日本を拠点にして活動している日本人が、どうしたらそんなことが言えるのかと、首を傾げざるを得ません。日本とスイスでは、歴史的背景も、制度も、政治的立場も、国民的な感情もあまりに違うからです。

詳しい説明は別の機会にしたいと思いますが、日本とスイスはある意味で正反対と言っていいくらいに違います。詳しい歴史は知らなくても、それぞれの周辺国をいくつか挙げただけで、両国とその国民が置かれた立場の差異は明らかだと言っていいのではないでしょうか。

 このように、日本では「プライベートバンカー」の語は、あまりに安売りされてしまって最近では名乗るのも恥ずかしいくらいです。

この状況を、スイスの本物のプライベートバンカーが知ったらどう思うでしょうか。

 

ここでもう一度、冒頭の引用文をご覧下さい。

下線(*)は「スイス人にとってのプライベートバンカー」を、下線(**)は「日本人から見たプライベートバンカー」を指しています。そしてどうやら、両者は同じ単語でありながら、同じものを指し示してはいません。

だからこそスイス人の「取締役を辞めてプライベートバンカーになる」という選択に、日本人は驚くわけです。

本稿では、「プライベートバンカー」の本来の意味を明らかにすることで、この語のこれ以上の安売りに歯止めをかける一助としたいと願うものです。

 

では、本来の「プライベートバンカー」とは誰を指しているのでしょうか。

 スイスでは、狭義の「プライベートバンカー」とは、「スイス・プライベートバンカーズ協会(Swiss Private Bankers Association)」に所属する10あまりの銀行の職員、なかんずくその経営者を指します。スイス・プライベートバンカーズ協会は、19世紀あるいはそれ以前から続く無限責任制の銀行だけが加盟できる組織であり、有限責任の株式会社になった銀行は入ることができません。スイス銀行の伝統と矜持を今に保つ組織であって、彼らが「プライベートバンカー」と言うときは、まさにその会員のみを意味しています。すなわち、株式会社に改組されたプライベートバンクとその職員に言及するときは、「プライベートバンク」「プライベートバンカー」とは言わず、単に「スイスの銀行」とか「スイスのバンカー」などと言うわけです。

 

 けれども、この定義は言わば「スイス・プライベートバンカーズ協会」内部の定義とも言えるものですから、一般的な事情に照らせば狭すぎると言わなくてはなりません。

そこで、通常は、無限責任制か否かにかかわりなく、プライベートバンキング業務に特化した銀行を「プライベートバンク」と呼び、そのプライベートバンキング担当職員を「プライベートバンカー」と呼んでいます。場合によっては、さらに、そのプライベートバンクから業務委託を受けている投資顧問会社等の職員までも「プライベートバンカー」と呼ぶことがあります。

 

ただし、いずれにしてもスイス連邦銀行委員会(Swiss Federal Banking Commission)の登録を受けた会社の職員であり、日本のように「名乗ったモン勝ち」の称号ではないことに注意するべきです。

 スイスのプライベートバンクの世界では、日本の銀行などよりはるかに顧客との距離が近いため、顧客が銀行そのものよりプライベートバンカーに付いているということもあります。その意味で個人的な性格が強いビジネスです。そんなところから、日本では個人営業のコンサルタントまでもが「プライベートバンカー」と名乗っているのかも知れませんが、言葉の本来の意味からはあまりに離れていると言わざるを得ないでしょう。

 

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