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「スイスのプライベートバンク」とは何か
「プライベートバンク」「プライベートバンキング」「プライベートバンカー」という言葉が、日本ではほとんど理解されないままに流通しています。
その結果、単なるファイナンシャル・プランナーが「プライベートバンカー」を、銀行ではない投資助言会社が「プライベートバンク」を名乗っています。こういう環境で「プライベートバンクとは何か」を論じても意味のある結論は得られないのではないかと思えるほどです。
ですから、ここではあえて「プライベートバンクとは何か」という一般的な問いを立てることはしません。範囲を「スイスのプライベートバンク」に限って、その定義をみてみましょう。それを知ることによって、「プライベートバンク」本来の姿が明らかになるはずだからです。
スイスで「プライベートバンク」と言った場合、最も狭い意味では、「スイス・プライベートバンカーズ協会(Swiss Private Bankers Association)」に属する10あまりの銀行を指すことになります。
「スイス・プライベートバンカーズ協会」は、無限責任制をとる銀行の業界団体です。すなわち、その会員となるためには、銀行は、経営に無限責任を負うスイス人社員が少なくとも1名いなくてはなりません。業務内容に差はなくとも有限責任の株式会社制をとる銀行には入会資格がなく、現在ではめったにみられない無限責任制の銀行だけが会員となることができる特殊な組織です。
ただし、無限責任制の銀行は現在でこそ例外的といえますが、19世紀頃まではむしろ一般的な形態でした。
その理由としては、当時はまだ株式会社の制度が現在のように整っていなかったということが挙げられます。
けれども、無限責任制は、近代的な企業経営には足かせとなるものでした。とりわけ銀行は貸し倒れリスクを負いますので、無限責任制では企業の存続さえ危ぶまれたのです。そのため20世紀にかけて多くの銀行が株式会社に移行しました。
その一方で、一部の銀行は無限責任制に執拗にこだわりました。逆説的ですが、無限責任制をとり続けるには「責任を回避できる」システムが必要です。そこで編み出されたビジネス・モデルがプライベートバンキングであったのです。
「プライベートバンキング」とは、言わば「貸し倒れリスクのない銀行業務」です。このビジネス・モデルのおかげで、これらの銀行は株式会社への移行を回避し、これにより旧来の同族経営を保つとともに、経営状況の開示なども免れているわけです。
このように見ると、「プライベートバンク」を「無限責任制の銀行」と狭く定義した場合、それは非常に特殊な世界になってしまいます。この定義に合致した銀行は、19世紀までは隆盛を誇ったものの次第にその数を減らし、現在は10行あまりになってしまいました。これでは、言わば「絶滅危惧種」のようなものだと受け取られかねないでしょう。
ところが、プライベートバンキング業界の現状は、これとは正反対の盛り上がりをみせているのです。
ということは、「プライベートバンク」を「無限責任制の銀行」に狭く限定する定義は、実態に合わない、狭すぎる定義だと言わざるをえないでしょう。
歴史を振り返ると、「プライベートバンキング」という「貸し倒れリスクのない銀行業務」を続けながら、会社形態としては株式会社制に移行した銀行が多くみられます。
株式会社制をとれば、経営状況の最低限の透明化を迫られますし、いつまでも同族経営を続けるというわけにもいかないでしょう。けれども、有限責任制によって経営の安定度はむしろ高まると考えられます。
スイス銀行の矜持を保つ無限責任制の銀行の存在は貴重であり、象徴的な意味があります。しかし、現在のプライベートバンキングは、むしろ有限責任制の銀行が主流になっているとも言えるのです。
そこで、当サイトでは、無限責任か有限責任かにかかわりなく、プライベートバンキングを専門に行なっている銀行を「プライベートバンク」と呼ぶことにします。その多くは19世紀から続いている伝統のある銀行で、創業当時は無限責任制をとっていました。顧客資産の保全という観点からすると、銀行が無限責任制か有限責任制かという違いは問題になりません。業務内容は変わらないのに、株式会社に移行しただけで「プライベートバンクではない」とされるのはおかしな話だからです。
ただし、最後に注意しなければならないことがあります。それは、無限責任制か有限責任制かにかかわりなく、スイスの「プライベートバンク」とは、あくまで「銀行」であるという点です。それが日本などとの重要な違いです。
銀行と何の関係もない会社が「プライベート”バンク”」を名乗ることは、スイスでは考えにくいでしょう。
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