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スイス銀行の「無限責任」とは何か
スイスの銀行には、最近では珍しくなった「無限責任制」をとるところがあります。
無限責任制の組織とは、日本で言えば、合資会社や合名会社のようなものです。そういえば、日本でも戦前の財閥の持株会社には合名会社の形をとるものがありました。
さて、「無限責任」ということは、社員(この場合は出資者)が、会社の負債に対して、自らの出資を超えた分についても返済の義務を負うということを意味します。
そこから、「無限責任制の銀行に資金を預けておけば、経営者が無限に保証してくれる」と考える人がいますが、それは誤解です。
なぜそうならないかと言えば、無限責任制の銀行の場合、顧客の預金は銀行の資産とは別勘定となり、銀行の負債とはみなされないからです。銀行は、これを保管しているだけであって、その資金で自らのために何かをしようとはしていないのです。
これに対して、通常の銀行は、顧客の預金を他人に貸し出すことで利子を稼ぐというビジネス・モデルをとっています。その場合は、預金は銀行の負債となります。銀行は、貸し出した資金が回収できなかったとしても、預金の引き出しには応じなくてはなりません。ですから、銀行自身の資産が毀損されたり、債権者である預金者におカネを返せなくなるというリスクを消し去ることはできないのです。
一方、「無限責任制」の銀行が採用したのは、これとは全く異なるビジネス・モデルでした。預金を銀行資産とは別に保持し、これを貸し出しに回したりしなければ、銀行自身が貸し倒れのリスクを負うこともありませんし、預金者に返せなくなることもありません。これが「無限責任制」の銀行のとったやり方です。
「無限責任」だからこそ、責任=リスクの回避をはからなければならなかったのです。
実は、19世紀くらいまでは、銀行の多くは無限責任制をとっていました。けれども、銀行として貸し出し業務を続けようとするなら、無限責任制のデメリットは明らかでした。そこで、そのデメリットを避けるため、貸し出し業務を行なう銀行は有限責任の株式会社に移行したのです。
一方、無限責任制に固執する銀行は、上記のような「貸し倒れリスクを負わない銀行業務」、すなわちプライベートバンキングという手法を編み出し、株式会社への移行を回避しようとしました。
現在もスイスでは、10行あまりの銀行が無限責任制をとっています。これは世界的にみても珍しいことです。無限責任制のメリットは、いくつか考えられますが、
1. 徹底した秘密保持 (株式会社化による「経営の透明化」を避ける)
2. 企業買収の回避 (同族経営の維持)
などが挙げられるでしょう。しかし、「貸し倒れリスクを負わない銀行業務」、すなわちプライベートバンキングという手法を編み出し、これに成功するということがなくては、無限責任制の維持は不可能だったと考えられます。
ただ、注意するべきことは、プライベートバンキングは、決して無限責任制の銀行の専売特許ではないということです。「貸し倒れリスクを負わない」ことのメリットは、無限責任制から有限責任制に移行したとしても同様に享受できます。ですから、「最低限の経営の透明化」を受け入れ、「同族経営への固執」がなくなったとしたら、有限責任制の銀行に移行したとしても何の不都合もありません。また、資産の保全、運用というプライベートバンク本来の業務に関しては、株式会社化した銀行も無限責任制をとる銀行も本質的な差はありません。
そういうわけですから、プライベートバンキングを行なう銀行、すなわちプライベートバンクの多くは20世紀中に株式会社になりました。そのほうが近代的で合理的な経営ができるからです。かくして、10行あまりの銀行を除き、現在スイスのプライベートバンクは、すべて有限責任の株式会社形態となっています。
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